森林経営管理制度とは
森林を大切な資源として管理し守っていくために「森林経営管理制度」がスタートしました。
この制度では、森林の経営管理が行われていない森林を市町村が仲介役となり森林所有者と民間事業者をつなぐことで適切な経営管理をおこないます。
これにより
- 放置された森林が経済ベースで活用され、地域の活性化につながる効果
- 森林の多面的機能が向上し、土砂災害等の発生リスクが低減され、地域住民の安全・安心につながる効果
などが、期待されます。
今後、森林所有者の方を対象に市町村による経営管理意向調査がはじまります。ご協力をお願いいたします。
森林経営管理制度の概要
経営管理を行う必要があると考えられる森林について、市町村が森林所有者の意向を確認後、森林所有者の委託を受け、民間の林業経営者に再委託するなどにより、林業経営と森林の管理を実施する制度です。
森林の経営管理の現状と将来像
国内の森林は、戦後や高度経済成長期に植栽されたスギやヒノキなどの人工林が大きく育ち、木材として利用可能な時期を迎えようとしています。
利用可能な森林が増える中、国内で生産される木材も増加し、木材自給率も上昇を続け、平成29年には過去30年間で最高水準となる36.2%となるなど、国内の森林資源は、「伐って(きって)、使って、植える」という森林を循環的に利用していく新たな時代に入りました。
一方で、我が国の森林の所有は小規模・分散的で、長期的な林業の低迷や森林所有者の世代交代等により森林所有者への森林への関心が薄れ、森林の管理が適切に行われない、伐採した後に植林がされないという事態が発生しています。
林野庁の調査によると、83%の市町村が、管内の民有林の手入れが不足していると考えている状況であり、森林の適切な経営管理が行われないと、災害防止や地球温暖化防止など森林の公益的機能の維持増進にも支障が生じることとなります。
加えて、所有者不明や境界不明確等の課題もあり、森林の管理に非常に多くの労力が必要になるといった事態も発生しています。
このような中、適切な経営管理が行われていない森林の経営管理を、意欲と能力のある林業経営者に集積・集約化するとともに、それができない森林の経営管理を市町村が行うことで、森林の経営管理を確保し、林業の成長産業化と森林の適切な管理の両立を図ることとしています。
多様で健全な森林の整備のイメージ
自然条件などが良く林集経営に適した人工林は、森林経営の集積・集約化、路網整備を進めて、林業的利用を積極的に展開します。
自然的条件に照らして森林経営に適さない人工林は、管理コストの低い針広混交林(スギや広葉樹が混じり合った森林など)等へ誘導します。
自然条件などが良く林業経営に適した人工林は、森林経営の集積・集約化、路網整備を進めて、林業的利用を積極展開します。
森林経営管理法の対象森林と責務
対象となる森林
- 経営管理権集積計画の対象となる森林は、都道府県知事が定めた地域森林計画の対象森林で「経営管理が行われていない森林」
- 「経営管理が行われていない森林」とは、水源涵養機能、木材生産機能、生物多様性保全機能等の森林の多面的機能の発揮のために間伐等の施業を実施すべきにもかかわらず、長期間にわたって施業が実施されていない森林
経営管理が行われていないおそれがある森林の基準の目安(参考)
樹齢等 | 状態 |
---|---|
1齢級 (1~5年生) |
造林届※ に基づいて植栽したにもかかわらず、造林届に記載された植栽本数に比べて残存本数が減り、造林届に記載された植栽本数のおおむね75%以下等、このままでは成林しないおそれがある場合。 下刈りが不十分であり、植栽木が下草に被圧されている場合。 |
2~4齢級 (6~20年生) |
除伐等が不十分であり、植栽木が植栽木以外の樹木等に被圧されている場合。 |
5~標準伐期齢 (21年生~) |
間伐が一度も行われていない、または最後に行った間伐から10年以上経過するなど、市町村森林整備計画に定められた標準的な施業方法を実施しておらず、林分が過密化している場合。 |
標準伐期齢以上 | 最後に行った間伐から15年以上経過するなど、市町村森林整備計画に定められた標準的な施業を実施しておらず、林分が過密化している場合。 |
(「森林経営管理制度に係る事務の手引き(林野庁計画課)」より引用)
※ 伐採及び伐採後の造林の届出(森林法第10条の8)
責務
- 森林所有者は、適時に伐採、造林及び保育を実施し、経営管理を行います。
- 市町村は、経営管理が円滑に行われるよう必要な措置を講ずるよう努めます。
森林環境税及び森林環境譲与税の制度設計イメージ
森林環境税及び森林環境譲与税は、温室効果ガス排出削減目標の達成や災害防止等を図るための森林整備等に必要な財源を、国民一人一人が広く等しく負担を分担して森林を支える仕組みとして創設されました。
- 個人住民税の均等割の納税者から国税として年額1,000円/1人(市町村が徴収)
- 税の規模は約600億円(納税者6,200万人)
- 令和6年度から課税
森林環境譲与税の各年度の譲与額と市町村及び都道府県に対する譲与割合及び基準
2024年度からの「森林環境税」に先立ち、森林現場の課題に早期に対応する観点から、森林経営管理制度の導入にあわせて2019年度から「森林環境譲与税」の市町村等への譲与が始まりました。
- 森林環境税の収入額に相当する額を譲与(制度当初は、市町村8/10、県2/10、段階的に市町村9/10、県1/10に移行)
- 譲与額は、私有林人工林面積5/10林業就業者数2/10、人口3/10で按分して算定
- 森林環境税課税までの令和1~5年度は、公庫債権金利変動準備金を活用して譲与